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ホメオパシーについて

ホメオパシーがなんぞやという話の前に、homeopathyを含む代替相補医療について考えてみよう。

CAM(Complementary Alternative Medicine) 代替相補医療とはなんぞや?

 巷間代替相補医療に関する関心が高まっていると聞く。国によって「正規医療」の定義が違うので、何が代替医療かと言われると困る。例えば日本や中国では漢方(日本の漢方と中国の漢方は正確には違うものです。中医を日本流にアレンジしたものが今の日本の漢方です。)は、正規の医療で、健康保険もエキス製剤に限って支払ってくれるが、アメリカでは完全な代替相補医療である。しかしいわゆる医学部で教える西洋医学以外を代替だの相補だというのが変で、人類の文明の歴史の中では、むしろ今の医学こそが新参者であるのだが。
 さて代替医療の問題になると、効果があるんだというひとと、いやあれば眉唾だ、プラシーボ(偽薬)効果だという人など、立場によっていうことが様々で、一体何を信用したらよいかわからない。
 さすがアメリカはその辺妙にえらくて、きちんと国がお金を出して様々な代替医療を科学的に検証している。

代替医療と聞くだけで眉につばをつける人は下記のsiteをごらんあれ。
http://nccam.nih.gov/
ちなみに日本でも、山梨大学医学部、金沢大学医学部、大阪大学医学部に代替相補医療を研究する講座がある。

代替医療が嫌いな人に

 科学的とは?
 この”科学的な”というのがじつは厄介で、正確に言うと”統計学的には”とか”数学的には”と言い換えなければならない。いわゆる二重盲検試験でプラシーボと比べて有意な差がある治療法が”証拠のある医学” evidenced based medicine (EBM)ということになっている。
これは確かにもっともだ。いままでは医師ごとの主観に基づいた医療が行われてきており、勉強をしていないお医者さんが何十年も前の方法で患者を治療しているなんてことが、かってはままあったようだ。また日本で使われている薬の中には、科学的効果のかなり怪しいものがある。具体的な名前を挙げると語弊があるから挙げないけれども、他の国にはなくて、日本だけにある薬の中に、怪しいのが多数ある。
 そういうわけで、標準化された、効果の確かな医療を行うために、EBMは重要で、私ももちろんソレニのっとっては治療しているのだが、一方医療は人と人の関係性の上に成り立つ行為なので、統計で計りきれないことも多々ある。また統計というやつが如何に曲者で、時に恣意的であるかは、医学や生物の研究で統計を扱ったことのある人ならだれでもわかることと思う。
 ある薬の効果を試験するとして、薬を投与するのが人格的にも申し分のない大きな病院の立派な先生か、あるいは貧民窟の低所得者対象の無料の病院で、研修医が薬を投与するのでは、結果に違いが出るでしょう。もちろんこれこそまさにplacebo効果そのものではあるのだけれども、統計処理されたデータの背後にあるもろもろを考えるときに、単純に統計的に正しいものが、実際にも正しいとは医療の場合必ずしもいえない。また偽薬と試験する薬が同じように効いてしまうことだって現実にはある。
 一番証拠のレベルの高い文献は、多数の論文を集めてさらに統計処理を加えたメタアナリシスである。もちろんそれはもっともなことではあるが、メタアナリシスに基づいた治療法がある特定の疾患を持つ100人が100人にすべて同じように効くことは実際はない。人によってはかえって害があることもある。同じ治療を受けたほかの1000人に効果があっても、ある一人に副作用が起これば、その人にとってはその治療法は悪なわけで、そこが医療の難しいところであり、また匠が必要な部分(名医)で、医者としてはやりがいのあるところである。

代替医療の好きな人に

 私は西洋医学も、漢方も、ホメオパシーも、とにかく病を癒すの役立つものはなんでもいいから使うという立場なので、どれかだけを金科玉条神のごとく敬い奉ることはしない。
しかし世の中には西洋医学を忌み嫌うひとが少なからずいる。そのうちのかなりの方は西洋医学による被害者であったりするので、一概に否定はしない。それはそれで良い。ただ、自分が西洋医学が嫌いなものだから、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いといった調子で西洋医学のすべてを否定し、なかんずくそれを他の人に広めようとする人もいらっしゃるのは少々困る、いや大いに困る。
 Homeopathyも効く時は驚くほど効く。やっている医者が驚くのだから、病を持つ人はきっともっと驚くのだろう。だからこそHomeopathyには熱狂的な信者がいて、すべてHomeopathyで治療しようなどという無謀なことを試みる。しかし、Homeopathyは自己(自然)治癒力を刺激することで、治癒の過程を促進することで効果を発揮しているので、その限界は自己治癒力の限界そのものとなる。極端な話落ちてしまった指はHomeopathyをもってしてももう生えてはこない。でも現代外科医学で落ちた指は繋ぐことはできる。いや、あと何年かしら、落ちた指を生やすような医療技術がきっと生まれる。
Hahnemann(Homeopathyの創設者)が生きたのは1755-1843年である。結核菌も梅毒スピロヘータも見つかるのはもっとずっと後である。遺伝子などという概念もなかった。
1865年 遺伝学の誕生(メンデル)
1882年 結核菌の発見(コッホ)
1905年 梅毒スピロヘータの発見( シャウディンとホフマン)

Homeopathyは素晴らしい医療であり、これからの医療であることは論をまたないが、だからといって、神ならぬHahnemannが生きた時代の、瀉血などが主たる治療法であった医学にも思いをはせながら、Homeopathyのもつ意味を考えてみるのもよいのではないか。

代替医療fanaticなかたにお勧めのsite

http://www.quackwatch.org/

勝手に引用してはいけないのだが、特に筆者の気に入った部分を挙げる。

Oscillococcinum, a 200C product "for the relief of colds and flu-like symptoms," involves "dilutions" that are even more far-fetched. Its "active ingredient" is prepared by incubating small amounts of a freshly killed duck’s liver and heart for 40 days. The resultant solution is then filtered, freeze-dried, rehydrated, repeatedly diluted, and impregnated into sugar granules. If a single molecule of the duck’s heart or liver were to survive the dilution, its concentration would be 1 in 100200. This huge number, which has 400 zeroes, is vastly greater than the estimated number of molecules in the universe (about one googol, which is a 1 followed by 100 zeroes). In its February 17, 1997, issue, U.S. News & World Report noted that only one duck per year is needed to manufacture the product, which had total sales of $20 million in 1996. The magazine dubbed that unlucky bird "the $20-million duck."

http://www.quackwatch.org/01QuackeryRelatedTopics/homeo.html

Oscillococcinumというインフルエンザの予防、治療に使うremedyについて比喩を使いながら批判している。Homeopathyを説明するときにもっとも説明に窮するのが、その治療薬であるremedyの作り方である。
希釈を繰り返してつくるのだが希釈しかたが半端ではない。例えば200Cというpotencyのremedyは100倍希釈を200回繰り返すのだが、もしその中に一つでももとの物質の分子が含まれているとしたら、希釈する前の物質の分子の数は100の200乗倍になるはずで、これは実に宇宙全体の分子数を越えてしまう!
さあどうしましょう!
もう一つ困るのはこのOscilococcinumが効くのも確かだからである。

普通の人

 普通の人は西洋医学のsectorと代替医療のsectorを行ったりきたりしながら、治療方法の真の選択者として振舞っている。このことは代替医療を眼の敵にするお医者さんたちも是非理解してほしい。
べつにArthur Kleinmannを読んでいなかったとしても、腰が痛いと整形外科に行くよりも、鍼灸に行くお年寄りのほうが多いという事実には目を向けてほしい。そしてなぜなのかを考えてみるとよいと思う。
上記Quckwatchのweb masterはアメリカの精神科医で、Homeopathyに限らずいろいろな代替相補医療に噛み付いているが、現代医学の総本山のアメリカでも、普通の医療よりも、代替相補医療の方に、アメリカ人はお金を使っているという事実もある。

Homeopathyとは?

 さて本論である。
 Homeopathyはザクセンの医師Samuel Christian Hahnemann(1755-1843)が創設した医学体系である。1796年に"Versuch uber ein neues Prinzip zur Auffindung der Heilkrafte der Arzneisubstanzen nebst einigen Blicken auf die bisherigen". (薬物のもつ治癒力を発見するための原則と今までの治療法との比較研究)を著して、その後のHomeoathyの大原則となる

"Similia Similibus Curentur".

似たものが似たものを治癒する を打ち立てる。

ちなみにこの原則自体はHippocratesやParacelsusのころから存在し、中国、ギリシャ、アメリカ先住民、インドなどで医療に応用されてきた。

 先にも書いたようにHahnemannがこの本を著した18世紀後半の医学は今日とは似ても似つかないもので、病気の原因については良くわかっておらず、動脈切開による瀉血、浣腸、毒性のある薬物の大量投与などが主な治療法で、患者の苦しみも大きかった。Hahnemannは医師として働き始めてすぐに、当時の医学では患者を救えないことを思い知り、臨床医として働くことをやめて、最初の妻Henrietteと子供たちとともに、放浪生活を始めた。
 その後Hahnemann は数多くの学術書の著述や翻訳を通じて、医学界で確固たる地位を築いた。さらに彼は薬物の作用についてその後詳細に記述した。このときの研究成果を元に
1810年  "Organon der rationalen Heilkunde", という 今日尚Homeopathyを行う医師にとっての標準的な教科書ともいえる本を出版した。
その中で,
das kleinste Arzneigaben oftmals eine viel starkere Wirkung besasen als grose 
少量の薬物投与の方が大量の薬物投与より効果がある(minimal effective dose)ことを示し、
. das Prinzip der potenzierten, durch Verdunnung wirksamen Heilmittel
 希釈による薬効の強化

という今日にいたるHomeopathyの原則を示した。希釈することによる薬効の強化は、今日の普通の薬理学の常識に反するし、またその希釈の仕方が、上記のように半端でないために、論議の的となるのである。1831年のコレラの流行時に、瀉血、下剤などの当時の標準的な医療は、患者の助けになるどころか、かえって害をなした。これに対してHomeopathyによるコレラ治療は大きな成功を収め、一般にHomeopathyが拡がるきっかけとなった。
 1835年 妻に先立たれていたHahnemannは45才年下のフランス人 Melanie d’Hervillyと結婚し、パリに診療所を設立した。Hahnemannは1843年7月2日パリで永眠した。

Samuel Christian Hahnemann年表

1755    Meissenに生まれる

1767-75 MeissenとSt.Afraにて学業

1775    Leipzigにて医学の勉強を始める

1777    Wienで勉強

1777-79  Hermannstadt, Siebenburgen にて家庭医、図書館司書

1779   学位論文Conspectus adfectum spasmodicorum aetiologicus et therapeuticus

1780     Hettstedtにて開業

1781     Dessau のMohren Apothekeにて臨床薬学の研修

1782       Henriette Kuchler (1764-1830)と結婚,子供を11人もうける。.

1784     薬学分野でDresdenで活動

1786     "Uber die Arsenikvergiftung" ”砒素中毒について”

1789     Leipzigで活動 ( フランス革命勃発 )
 

1790  Homoopathie 誕生。 "Materia Medica"(v.Cullen) 翻訳を通じて。
最初の薬物のproving( Arneimittelprufung)、 Chinarinde.

 
1792 dier "Irrenanstalt fur die besseren Stande" をGothaの Georgental城に設立.

1793-99"Apotheker Lexikons" 出版
 

1796 最初のHomoopathieに関する論文公表:
 "Versuch uber ein neues Prinzip zur Auffindung der Heilkrafte der Arzneisubstanzen nebst einigen Blicken auf die bis-herigen" (Hufelands Journal, Band 2)
provingした物質を Materia medica "Fragmenta de viribus medicamentorum positivis in sano corpere observatis として出版
"

1806       "Heilkunde der Erfahrung"

1810 "Organon der rationellen Heilkunde", 出版

1811-21 教授資格取得論文 "De helleborismo veterum",
       Leipzig大学での講義
      provingした薬物を "Reine Arzneimittellehre"(全6巻)として出版

1821-35 Kothen ( Anhalt )でHerzogs Ferdinand von Anhalt-Kothenの侍医として勤務
,
1828  "Die chronischen Krankheiten" 出版

1829  Deutschen Zentralvereins homoopathischer Arzte設立

1830    Henriette夫人死去。コレラ流行。
     病気の伝染が. "kleinste Lebewesen" 極めて小さな生物による媒介であることを予言。

1832   "Allgemeinen homoopathischen Zeitung" -出版。ドイツ初の定期的な医学雑誌。
.

1835   フランス人Melanie D’Hervilly (1802-1878)と結婚し、パリに移住。

1843  88才でパリ永眠

現在およそ3000種類のremedyがHomeopathyでは用いられている。

波動が好きな方に

先に少し書いたように、筆者はHomeopathyがどうして効果があるかについては関心がない。
というよりも説明できない。また無理に説明したいとは思わない。
臨床医としては副作用なく、効果があればそれでよしである。
しかし、世の中にはそうではない方も多い。
ではホメオパシーの作用機序としての波動やそのほかの説明がどのように一般に見られているかを知っておくのも悪くはなかろう。
まあ議論はまったくかみ合わないでしょうけれども。

大阪大学サイバーメディアセンター 菊池誠
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/nisekagaku/nisekagaku_nyumon.html

日本版「ポピュラーサイエンス」誌の連載「渋谷研究所X」 2004年12月号

所謂波動測定器は電気抵抗をはかっているらしい。筆者は直接回路を見たことがないが、たぶん数十万から100万円以上の価格で売られている波動測定の機器の製造原価はたぶん1万円以下であろう。
所謂嘘発見器と同じ仕組みらしい。秋葉原で部品を買い集めれば、嘘発見器は数百円で制作可能である。

しかし電気抵抗を計っているからといって、単に検者の手の汗の出具合の変化による抵抗の変化と言いきって良いのか。
ここから先は考え方というか、哲学の相違になる。

全くの偶然で、無生物から現在の人間の遺伝子が出来る確率は、数学的な確率論からいえば極めてありそうにないことで、そこに何らかの超自然(ある人は神と言うかもしれない、なんらかの不可知なもの)の力
が働いていると考える学者もいれば、いやそうした偶然が確かに重なって、進化の結果人類が誕生したのだと考える学者もいる。
最近の物理学では、観測者としてのヒトがあるからこそまさに宇宙があるという、すなわち知能を持つ生物の存在は必然の結果という考え方もあるらしい。凡百たる筆者には、その辺になると理解不能である。
いやそもそもこの大宇宙が無から発生したというビッグバンの話は、筆者のような脳味噌の持ち主には哲学論争としか思えない。

結局波動についての議論も、所謂波動測定器で測っているのは電気抵抗であるとして、それを単なる物理現象とみなすのか、あるいは抵抗値の変化を、なんらかの目に見えない力が検者に働いた結果としてみるのかで、解釈は変わってくるのではないか。だから話がかみ合わないのではないか。

筆者はお金がないから、いやあってもけちだから波動測定器は買わないけれど。

その後のHomeopathyの展開

これからしすこしづつ現代に至Homeopathyの歩みを綴ってみよう。Homeopathyがこんなに効いたとか、とにかく宣伝ばかりが目に付き、まだなじみのない日本では真の力が伝わらない内に、一時の流行になりはしないかという危惧がある。

Hahnemann以後のHomeopathyの歴史

Homeoapathyはアメリカやヨーロッパで普及し、ヨーロッパの王室、アメリカの起業家、宗教界から支持を受けたのであるが、それと同時に既存の医学会からの排撃が始まった。
Hahnemannの手法に真っ先に反感を持ったのは薬局関係の人々であった。Hahnemannはたった1種類の薬を少量処方するだけだったので、 薬局のもうけが少なかったからである。Hahnemannの処方とは別の薬物を薬局が出すに至って、Hahnemannは自分で調剤し、自分で薬を出すようになる。薬局サイドは調剤の権利を侵害したと訴えて、その結果Hahnemannは1920年Leibzigで逮捕され、町から追放された。
彼はHomepathyの擁護者であったFerdinand 大公爵のもと Kothenにうつり、調剤の許可ももらって診療活動を行った。さきにも書いたようにこの時期のヨーロッパの通常医療は、益することよりもむしろ害することが多かったことが、Homeopathyの普及にプラスに働いた。
ちなみに瀉血、下剤に加えて当時の欧米医師の使用していた薬物には、砒素、水銀、鉛、毒性の強いハーブなどである。
 当時の”正規”医療は野蛮であったが、当時の”正規”医療の重鎮たちは、Homeopathyをいんちき療法(quackery:上記HP(quackwatch)を思い出してください)だの、非科学的だの、カルト的だのさんざん非難した。”正規”の医師側は、Homeopathyを行う医師などを正規の医学教育を受けていないと非難したが、実際にはHomeopathyを行う医師の大部分は当時の正規の医学教育を受けた医師であったし、そればかりかHomeopathy黎明期のHomeopathは、当時の最高学府出身であった。
 当時の医学界や、薬局関係者がHomeopathyを忌み嫌った最大の原因は、Homeopathy的な治療を行うこと自体が、一般医薬に対する強烈な批判になっていたからである。 このころ薬といえば、生体になんらかの抑制をもたらす物ばかりであった。そして、その抑制によって、患者の持つ真の問題はマスクされ、潜行してしまうとHomeoathyでは考えたのである。
 じつはこの辺の事情は200年近く時間の経過した今日でも同じことである。普通の病院や診療所で貰う薬がどんなものか考えてみるとそのことは良くわかる。
 ”抗”生物質、血圧を下げる薬であれば、カルシウム”拮抗”剤、アンギオテンシンII受容体”拮抗”薬等など、みんな”抗”の字がついているでしょう。すなわち生体の中のプロセスをブロックすることで、機能を発揮している。
 Homeopathyでは、症状、例えば発熱などは、治癒過程における臓器の反応と考え、その治癒を促進させるために希釈したremedyを投与する。
 このふたつの違いがお分かりになるであろうか。

Homeopathyはどこが普通の医学と違うのか

 歴史話からは少しそれるが、Homeoathyと通常医療の最大の違いについて少し触れる。
その違いの本質は、単にremedyという特殊な治療薬を使うことにあるのではない。
18世紀以来の通常医療では、多数の人間の共通な部分を見つけ出して、それに対して介入することを目的としてきた。感染症などでは、個人の差よりも、各人の共通する点が大きく、抗生物質等の通常医療が大きな成果を上げてきたことは論を待たない。梅毒にかかれば、ほとんどの人が一様な経過を示して、病が進行していく。結核もそうである。
 現代医学でもっとも大切な作業は病名をつけることである。問診、検査などは診断名をつけるために費やされる。そし同じ病名であれば、Aさんも、Bさんも基本的には同じ治療を受ける。
 Homeopathyでは、これに対して、一人一人の違いを重視する。Homeopathy問診の大部分はその患者が他の人とどう違うのかを見つける作業である。したがってclassic homeoathyでは、いわゆる病名というものが存在しない。同じような症状をもち、現代医学では同じ治療法、同じ薬を使うAさんとBさんがいたとして、Homeopathyでは肉が好きなAさんと、喉がかわいてしかたがないBさんでは治療に使うremedyは違うかもしれない。
Homeopathyのこうした特質こそ、現代における様々な疾患や症状の治癒に役立つのである。

アメリカに渡ったHomeopathy

 今日にいたるまでアメリカ医師会はHomeopathyを眼の敵にしているが、その最大の理由は経済的なものではないかとの考察もある。
 アメリカへの広がりの嚆矢は、オランダ人ホメオパスHans Gram1825年に合衆国に移民したときに始まる。その後急速に普及し、1844年にはthe American Institute of Homeopathyが設立された。
なおHomeopathyを敵視する
the American Medical Association(アメリカ医師会)は1846年に設立された。
AMA内部のHomeopathyの反感は強く、Homeopathyを行う医師を組織から追放することを決定した。マサチューセッツ州以外のすべての州でのHomeoathyを行う医師の追放に成功した。ボストンの指導的立場にある人々の間でHomeoathyに対する支持が強かったためにこの例外が認められたが、Homeopathyを行う新人医師の加入は認めないと言う条件が付けられた。この追放劇は1871年の時点で残っていた8名のHomeopathyを行う医師を追放して終結する。1882年にアメリカ医師会は、Homeopathy医師を含む正規医学校卒業生すべてを迎え入れたという理由でthe New York State Medical Societyからの評議員の受け入れを拒絶した。 アメリカ医師会は,Homeopathを組織から放逐したばかりではなく、1855年に職業倫理規定を制定して、Homepathy医やそのほかの”非正規医療”に相談を持ちかけるだけで、会員資格を失うとした。一部の州では会員資格の喪失は、医業が行えなくなることを意味した。この規制は次第に強化され、コネチカットの医師は妻!であるHomeopathに相談しただけで、医師会から追放された。ニューヨークの医師はHomeopathyの薬局から乳糖!を購入しただけで会員資格を失った。

鍼治療は疼痛緩和に有効か Double  Positive Effectについて

http://www.gerac.de/eng/pk_berlin/thesen/Trampisch-Thesen.pdf

Homeopathyの治療効果の科学的証明(数学的証明)を語るときにいつも悩まされるのが、プラセボとの有意差はないのだが、プラセボもホメオパシーも同じく有効(無効ではない!)であったという結果である。
これをDr ReillyはDouble Positive Effectと呼んでいる。
これと同じようなことは鍼灸にも見られる。表記の論文はそれについての報告である。

要約すると
鍼治療を希望した慢性腰痛患者1162例、変形性膝関節症1162例にたいして鍼治療の有効性を検討した。
1)ガイドラインに基づいた標準的治療群
2)鍼治療
3)正規の経穴から外れた効果を認めないはずの箇所に鍼をさすプラセボ群

6月後の結果
腰痛に対しての効果があった比率
1)標準治療群 27.4%
2)鍼治療群 47.6%
3)プラセボ群 44.2%

変形性膝関節症に対する効果
1)標準治療群 28%
2)鍼治療群 51%
3)プラセボ群 48%

ここでのプラセボ治療では正規の鍼治療と同じように経穴以外ではあるが鍼をさしている。
もともと鍼治療を希望する患者を対象としたために、バイアスがかかった、この研究に参加したは医師ではなく、鍼灸療法士であったために標準的治療の効果を十分に引き出せなかったなどが解釈として挙げられている。そしてもし鍼治療が本当に有効であるなら、鍼治療群とプラセボで差が出るべきであるともいわれている。

しかしこの結果を単純に見ると鍼治療は経穴に当てようが、当てまいが、訓練を受けた鍼灸師が行えば、標準的な治療よりも疼痛緩和に効果があったということである。
さきにも述べたように医療は人と人の相互関係の上に成り立つ行為であり、治療者の熱意は治療結果に影響を与えるのである。たとえばこの研究で鍼灸師が”より熱意をもって”標準的治療より鍼治療を行っていたとしたら、鍼治療とプラセボ(鍼は刺す)が、標準的治療より効果があっても驚くにあたらない。
しかし熱意という定量化できない指標は残念ながらEBMでは考慮されないのである。

薄い濃度で効く薬

 Homeopathyのremedyといえばといえば薄い濃度なのだけれど、Hahnemann自身は30C
すなわち100倍希釈を30回繰り返した濃度までしか使っていなかった。
 同時代にすでに200Cや1Mも現れていたけれど、基本的にHahnemmanは30Cまでの使用だったらしい。
 薄い濃度での薬物の効果で思い出すのは環境ホルモンのことである。環境ホルモンに対して感受性の高い生物と低い生物があり、また影響には必ずしも濃度に依存しない。つまり低い濃度の方が効いたりする。薄い濃度領域の方が環境ホルモンとしての働きが強いことも多い。
10のマイナス9乗、12乗といったレベルで効果を発揮する薬もある。
 薄い=効果が少ないないし効かないではないことがおわかりいただけるでしょうか。
 広い森の中で雄が雌を呼び寄せるためにフェロモンは拡散に拡散を重ねるわけですが、でもしっかり雌に届く。
 あるいは焼酎の水割りおいしく飲むこつとして、焼酎と水を混ぜて一升瓶で良く攪拌して、数日ねかせておく。そうすると味がマイルドになる。これはMRIで分析すると、アルコール分子の周りの水分子同士の固まりが小さくなっているためであるといわれている。
 人間の舌はそんな僅かな差をも見分けてしまう。