新型インフルエンザとタミフル

タミフルの所謂”副作用”の騒動も季節が変わり一段落して、新聞でもタミフルについて触れられることはなくなった。メディアの無責任な報道で、タミフルの副作用で、子供の飛び降り事故が多発したことが規定の事実になってしまったようである。

しかし、専門家の意見によれば、恐怖を伴う幻覚を見るのは、インフルエンザでは昔から知られていたことであり、タミフルの投与とは無関係である可能性が高く、またタミフル発売以後、10台の飛び降り事故が急増したという証拠はまったくない。またFDAでも、ひとこと日本からの報告に触れているだけで、とくに思春期の青少年へのタミフルの投与をしないようにとは勧告しておらず、10才代へタミフルを投与すべきでないとしているのは、日本だけである。というのが現在のところの状況である。

さて、普通のインフルエンザはともかく、いま最も心配されているのは新型インフルエンザである。新型インフルエンザについて少しおさらいしてみよう。

数十年に一回ウイルスの突然変異によって出現する新しい型のインフルエンザ のことで、ほとんどの人が抵抗力がない、免疫がないということを除けば普通のインフルエンザとなんら変わることがない。人々に免疫力がないために一度感染すると、体内でウイルスの増殖が続くので、からだの免疫反応としてのサイトカインの産生が大量に長期に続くために、肺障害をおこして死亡することが多くなる。

流行すると人口の25%が初年度に感染し(日本では3200万人)、死亡率は何もしなければ凡そ2%、ワクチン、タミフルなどで予防、治療が出来れば死亡率は1%程度と見積もられている。流行の波は何回もやってくるので、例えば山にこもったり、電車を一時的に止めたりしても、流行の完全な阻止は困難。

現在の治療法としては、ノイロミニダーゼ阻害薬しかなく、タミフルやリレンザがこれにあたる。H5N1(鳥インフルエンザ)の治療経験から言えるのは、早期から長期(10日間)に通常の倍量のタミフルを投与しなければ効果がない。だから、もし新型インフルエンザが流行り始めたら、発熱したらすぐにタミフル服用を開始する。検査が陽性になってからタミフルをはじめたのでは間に合わない。

ところが日本は2500万人分の備蓄しか なく、それも通常投与量での備蓄で、しかも現時点ではまだその半分も備蓄が済んでいない。フランスでは最終的には人口の50%以上の分の備蓄をすすめている。

また、タミフルが足りないからといって、厚生労働省の言うように、高リスクの人への投与をしないということは現実には出来ない。そりゃそうでしょ。実際に流行が始まって、病院や診療所の外来を発熱で訪れて、医者に、あなたはインフルエンザの可能性が強いですが、30歳の健康な成人なので、タミフルは出せません、2%の確率で死にますといわれて、あなた納得できますか。

というわけで、マスコミの人がもしこれを読んでいたら、秋にもWHOの新型インフルエンザに関する勧告が出ますので、しっかりと客観的に報道して、新型インフルエンザに備えるように世論を喚起してくださいね。


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